「ええすくれめんとおお!」


(前線部隊を視察中の総統ちゃんより緊急通信)

エマージェンシー!エマージンシー!救援求むなりよ〜!
え?敵の奇襲攻撃?違うなり!また先任下士官のベルタ准尉を怒らせてしまったなり!キレた
准尉がビーストモードに入って大暴れ。獣人化した大人のワータイガーには話し合いが通じねえ
なりよ〜!あの爪と牙にかかったら、ライカンスロープの再生能力が間に合わないくらいに
バラバラに引き裂かれてゴーイング天国なり!さっきからのらごんズがとびかかって、この前
みたく押さえ込もうとしてるなれど、一撃で10メートルくらいぶっとばされてるなり!・・・でも
死なないからすげえなりな、アレで。噛まれてもゴムみたく伸びて歯がたってないし(笑)・・・って、
微笑んでる余裕はねえのなり!
ああ、なんか叫んでるなりよ?・・・「エ〜スクレメントォ〜!」・・・ええと、イタリア語で
「クソったれ〜!」の意なりな。ってなんでイタリア語?そして何故、総統ちゃんも知ってる
なりや?・・・ああ、思い出した!あの小説でこんなシチュエーションが!てなわけで今回は
筒井康隆著・小説「おれの血は他人の血」!(1974年作品)

地方都市の建設会社に就職した若いサラリーマン・絹川は、ある日バーでヤクザ三人を半殺しに
する大暴れを演じてしまうなり。彼は、怒りが頂点に達すると意識が失われ、「エスクレメントオ」の
絶叫とともに凶暴化してしまう、謎の病気?があったなり。殺人すら犯しかねないその凶暴性を
恐れた絹川は、なるべくストレスやトラブルを抱えないように生活していたなれど・・・その圧倒的な
強さを目撃したヤクザの幹部・沢村により、組長のボディーガードとして勧誘されるなり。実はこの町、
二つの暴力団がそれぞれ警察や市長、税務署を抱き込み抗争中。それは絹川の会社の派閥争い
にまで絡んでいたなり。自分の女と間違われて対抗組織に拉致されたバーの女を救うため、結局
ボディーガードを引き受けざるをえなくなった絹川。しかし、何者かの思惑により抗争は激化!
とうとう、町ぐるみで銃を撃ちあいダイナマイトを投げあう一大市街戦の様相を呈していったなり。
はたして絹川の運命は?陰で糸をひくのは何者か?そして、絹川が誕生したころ、来日中死亡した
という凶暴なマフィアのボス・デ・ロベルテスとは?(タイトルから凶暴化の謎を想像すべし)

ハメットの「血の収穫」、黒澤明の「用心棒」・・・といった、一つの町で二つの暴力組織が対立
している間に入って、双方を争わせ壊滅させるパターン・・・なれど、今回、主人公は手駒として
使われてしまってる立場なり。主人公の一人称でハードボイルドっぽい
語りくち。この頃の筒井作品
らしく、バイオレンスの描写がいちいち具体的で細かいのが特徴なりな。この時代、まだスプラッタな
描写はハリウッド映画でもそんなにたいしたことはなく、むしろ日本の「子連れ狼」の劇場版が
とんでもなくスプラッタ、オモチャみたいに切り裂かれる肉体の破壊を描いていたくらいなりや?
この5年前の第一回星雲賞受賞作品「霊長類南へ」において、核戦争によってじわじわ死にゆく
世界で南に逃げる人類のパニックの中での狂った死を、エグく、こと細かに、しかし笑ってしまう
ほどこっけいに描いていたなれど、そのノリは本作でも健在。いきすぎた肉体破壊描写は
むしろギャグになってしまうという、1966年の短編「トラブル」(注1)でさんざんやってるアレなりな。
昨日までの日常が、いつのまにか本気で殺しあう非現実的な世界に変わり、その中で自分は
圧倒的な破壊力を持つヒーローとして主役となる・・・う〜ん、
読者対象としての現実世界で
キレたくてもキレられないサラリーマンたちに、暴力ヒーロー化願望を充足してあげる
娯楽作品として、いい仕事してるなりな。ここ20年の筒井の小説に不足してるものなり。(注2)


そ・・・総統ちゃん命令第124・・・・ピギャ〜!准尉がこっちに来るなり!た・・・
たあすけてぇ〜!

・・・それが、総統ちゃんの声を聞いた、最後だった・・・?(伊集院風に)


(注1)・・・「トラブル」は、「人形つかい」型の侵略アメーバ型宇宙人に乗っ取られた人間たちが、
超人的な運動性を発揮して互いの肉体を破壊しあう描写がものすごいスプラッタSFの元祖。

(注2)・・・娯楽作品が皆無だったというわけではねえなれど、かなり少なくなってしまったのは
事実。数少ない娯楽系短編集「薬菜飯店」は、ジョジョ第4部のトニオさんのスタンドのもとネタ。


「おれの血は他人の血」


日本SF大会・第五回星雲賞(長編小説部門)受賞作品。映画化もされてるなり。




「宇宙ねずみ小僧ジム吉」


(前線で勲章授与を執り行っている総統ちゃん)

いや、どうなることかと思ったなれど、義勇兵で参加している双子ワーチーターの少尉たちが、
連携プレーで獣化したベルタ准尉のおしりに、点滴にエチルアルコール混ぜたものを注射
べろんべろんに酔わせて、無力化してくれたなりよ・・・ああ、無力化ってのは違うなりな。
ビーストモードが解けたベルタ准尉、どうも酒が入ると母性本能が全開になってしまうようで
総統ちゃん、今度はベタベタにかわいがられてしまったなり〜。あやうく「かわいがられ死」
するのではないかと思うくらい、かわいがられてしまったなりな〜。おパイで窒息するかと思った
なり!身代わりにエミーラ中尉とワーチーターズがかわいがられてくれて助かったなり。

それにしてもワーチーターズ、君たち幼稚園児なのに毎回毎回お見事な活躍ぶりなりな〜!
今回の功績をたたえ、「えらいで賞」を授与・・・え?甘いものがいい?そんなんでいいなりや?
配給のコンデンスミルク缶のケース、まるまる一つ欲しい?はあ、缶に小さい穴あけて、
チューチュー吸うのがたまらん?・・・ううむ、つつましいんだか、単にお子様なんだか。
以前、総統ちゃんが視察に来て暗殺されそうになった時(注1)も、周りがパニクってる中、
君たちだけは適切な行動をとっていたなりな!小さいのになんで上手に戦えるなりや?
・・・え?お父さんお母さんに習った?何やってる人なりや?君らのご両親?・・・
お父さんが大泥棒で、お母さんがもと殺しのプロ!?マジなりや!恐るべき一家なり・・・
って、ウソなりや?なんだ、まるであの一家みたいなので、びっくりしてしまったなりよ!
「あの一家」・・・そう、SF小説「ステンレス・スチールラット」のディグリッツ一家!

遠い未来、地球をはるか離れた多くの惑星に進出、その大半では何不自由なく生活して
いる人類・・・そんな世界で、あえて怪盗として生きるアウトロー・「"するり"のジム」こと
ジム・ディグリッツ!またの名を「ステンレス・スチールラット」!ステンレスに覆われた
未来都市の隙間をすり抜ける、捕らえることの適わぬねずみ小僧!ヒマな警察に仕事を
与え、世間に刺激を与える義賊(どうせ保険会社が損失補填してくれるし)と主張する彼は、
ある日罠にはまって捕らえられるなれど・・・彼を捕らえた男こそ、大先輩の「捕らえられない
インスキップ」だったなり!いまや、毒をもって毒を制すごとく、対犯罪特殊部隊の長官と
なったインスキップは、同じく殺人を嫌う怪盗であるジムを「部隊」にスカウトしたわけなり!
結局、怪盗でありながら凶悪犯罪者を追う捜査官となった彼は、恐るべき殺人狂の
女犯罪者・アンジェリカに遭遇。金のために人を殺すことをためらわない、歪んだ精神の
持ち主の彼女との戦いで重症を負いながらも、なぜか惹かれ、救いたい気持ちになる
ジム。ついに捕らえられた彼女は、(この時代に死刑は無いので)強制的な精神改造で
犯罪の因子を取り除かれ、ジム同様に「部隊」の有能な隊員として社会復帰!(注3)
かつて敵対しながらも惹かれあった二人は、ついに結婚して双子の男の子を儲け、平時は
とんでもない怪盗一家、事件があれば「部隊」最強のエキスパートとして世界を救う!

「宇宙版ルパン三世」(注4)って感じなりや?しかし、直接巨悪のボスと対決することが多い
ルパンと違い、ジムは「部隊」などの味方の人員を使って、間接的に敵の陰謀を陰ながら
阻止することが多く、アクション的には地味なり。最初の「ステンレス・スチールラット」では
凶悪犯罪者アンジェリカがメインの敵、二作目「〜の復讐」では恒星間侵略戦争の阻止、
「〜世界を救う」では超時間侵略の阻止、「〜諸君を求む」では、エイリアンの侵略とその
黒幕の阻止、そして「〜大統領に」は、長年独裁者に支配された惑星を、イカサマ選挙で
開放するお話。2〜4作目は、作者がハリイ・ハリスンなだけにスペースオペラや宇宙戦争
SF、タイムマシン物に対する、悪意と愛情まぜこぜのパロディーになってるなり。特に
吾妻ひでおの絵を連想するぐろぐろな宇宙人の連合が攻めてくる「〜諸君を求む」の前半が
面白いなりな。ただ、キャラクターは魅力的なれど、途中から作品の方向性が怪しくなる
場合もあるなり。その点、最後の「〜大統領に」は一貫した作りで、それまでの全宇宙
規模の危機を救うわけではないなれど、あくまで殺さず、ハッタリとイカサマと仕掛けで
独裁者を追い落とす「怪盗」ステンレス・スチールラット一家の本領が発揮されてるなり。


総統ちゃん命令第12489号!
サンリオSF文庫(絶版)版の本作品最大の欠陥は、ひたすら邦訳が読みにくいことなり!
なんか、ものすげえ直訳とゆ〜か、日本語化したときのアレンジのセンスが皆無!ハヤカワ
SF文庫の邦訳で感じられるハリスン作品の軽快さが失われ、本来の面白さを大きく損ねて
おるなり!新たな翻訳にてどこかで復刻すべし!
べしったらべし!!べし!


(注1)・・・同人誌「玉砕大噴火」「玉砕大統領」収録の漫画を参照。

(注2)・・・この小説が書かれた時代、さびないステンレスは未来の合金のイメージだったなり。

(注3)・・・しかし、愛するジムに危険を及ぼすものに対してはすぐ殺意を抱くなど、けっこう危険。

(注4)・・・むしろ、フランスとの合作で企画されたけどポシャった「ルパン8世」なりや?


「ステンレス・スチールラット」





「まるでそびえ立つクソだ」


(訓練キャンプで体験入隊中の総統ちゃん)


♪ファ〜ミコンウォ〜ズがで〜るぞ〜!こいつはどえらいシミュレ〜ション♪って、なにゆえ
CMソングでランニングするなりや、我が軍の新兵は?こんにちわ、志願兵の増加を狙って
自ら海兵隊訓練キャンプで一日入隊してる総統ちゃんなり!・・・しかし、教官に雇った
傭精分隊のドワーフ、ハイ・ホー少佐の奴が情けようしゃなく、本気でビシビシ鍛えられて
プチ臨死体験中なり〜。(注1)おまけに声が似てるからって、「タママ二等兵」なんて呼び名を
勝手に付けられてしまったなり、く、屈辱ッ・・・メラメラメラ・・・コ・ノ・ウ・ラ・ミ、ハ・ラ・サ・デ・
オ・ク・ベ・キ・ナ・リ・ヤ・・・・・・うらみはらさでおくべきなりや!などと明日の報復を誓い、
なれど怒られると怖いので走り続けるなり(涙目)。奴の部下のガン・ホー少尉なんて全くのオニ
・・・ああ、奴は白黒の漫画で見ると外黒人さんっぽいなれど、カラーで見ると本物の赤鬼なんで、
オニであたりまえなりな(苦笑)。そういや、「ガン・ホー」って言葉(注2)、どっかで聞いた
ような?・・・ああ、思い出した!あの映画の字幕では「闘魂」と訳されていたアレなり!
映画「フルメタル・ジャケット」!・・・なれど、今回は原作小説「フルメタル・ジャケット」!

ベトナム戦争真っ最中のアメリカ。志願兵のみで編成される、危険な敵前上陸を任務とする
海軍の中の歩兵・海兵隊(マリーン)の新兵教練場(キャンプ)。早速、整列した新入りたちに
口汚い罵りを浴びせる訓練教官・砲兵軍曹ガーハイム(注3)。猛訓練によって変わっていく
新兵たち。しかし、全ての訓練が終了した晩・・・当初おちこぼれ中のおちこぼれ、仲間にも
うらまれてリンチにあってしまったほどの"ほほえみデブ(ゴーマー・パイル)"・・・しかし後に
射撃の才能を見出され、軍曹にも認められるようになった彼は、銃の持つ魔力に魅入られた
ように軍曹を射殺、直後自殺してしまうなり。(注4)そしてバトナムの戦場へ・・・(注5)
海兵隊の報道班員としての任務に就く語り手の主人公・"ジョーカー"、同行するカメラマンの
"ラフターマン"は、猛暑の中狂った戦場と兵士たちを目撃し、その一員となっていく・・・。

ベトナム戦争批判映画としてヒットした「プラトーン」以降、「ハンバーガー・ヒル」(注6)などベトナム
戦争物の映画化が流行った時期があったなれど、この「フルメタル・ジャケット」(注7)も映画化され、
リー・アーメイの演じる軍曹の罵倒っぷりのあまりの見事さは、現在でもネット上でネタとしてよく
見受けられるなりな(笑)。本来俳優ではなく、演技指導に来た本物の教官だったというのも納得なり!
「貴様ら全て公平に価値が無い」と宣言する彼こそは、それまでの新兵たちのシャバでの地位や
人格を全面否定。全て叩き壊し、「海兵隊員」という型に流し込み、一人前の兵士に作り変えるという
本物のプロなり!シャバでの名前も否定され、「冗談好きそうだから、貴様はジョーカー。テキサス
生まれだから、カウボーイ。」といった感じに適当な呼び名が付けられ、おなじみ下品ソングでのランニング
など、「タフでクールな戦闘機械」になるため、徹底した海兵隊ノリを叩き込む!「誰か」である前に
「海兵隊員」であるようにするなり!そして、そのための不条理な試練を乗り越えた時にこそ、
軍曹は心から彼の訓練生たちの成長を喜び、初めてその「海兵隊員」としての価値を認めるものなり。
残念ながら、ほほえみデブはやっと才能を認められながら、その才能を引き出してくれたM14ライフルに
異常な愛情を抱き(注7)、訓練終了で引き離されることを拒否、ついには軍曹を射殺して自殺・・・
武器をコントロールできず、自己を認められる存在にしてくれた武器に心を支配されてしまったのが
ほほえみデブなり。こうして、「海兵隊員」となった代わりに、古き良き陽気なアメリカン・ボーイたちの
心はベトナムの地で、次々と死んでゆくなり。ベトコンと一般市民の区別はつかず、軍隊としての
規律は乱れ、敵も味方も、兵も民間人も関わり無く、己の生存と心の安定のために全てを殺す、
「タフな殺し屋」たち(注8)。自分が壊れないようにするための行為としての殺しが、逆に己を壊していく。
そうして、登場人物たちは次々に「壊れて」いき、無常なラストシーンに向っていくなり。映画では、
テト攻勢での女狙撃兵との戦いがクライマックスなれど、その後の別の狙撃兵との戦いが、より
バイオレンスかつ非情な展開になっていくので、未見の者は古本屋にダッシュGO!なりよ。

総統ちゃん命令第12494号!
映画版では軍曹のインパクトだけがずば抜けていたなれど(笑)、本編はずいぶん省略されてしまって
いるなり!「バンド・オブ・ブラザーズ」みたいな、TV向けミニシリーズとしてきっちり再現して欲しい
ところなり・・・え?バイオレンスかつあまりにどよ〜んとしすぎて、視聴率稼ぐのはムリ?まあ、最後
まで希望のカケラも見出せないなれど・・・ええい!だが、それがいい(前田慶次風に)!ゆえにすべし!
べしったらべし!!べし!

(といいつつ、ランニングをやめて演説を始めたのを怒られて、古歯ブラシで便所掃除の罰)


(注1)・・・(総統ちゃんは知らないが、実はこいつらが暗殺未遂事件での殺し屋だった。同人誌参照。)

(注2)・・・もとは中国語の「共働」、仲間と共になしとげるの意味なので、「共闘」の方が適切?

(注3)・・・映画ではおなじみ「ハートマン軍曹」。なぜか、他のキャラも本名がすっかり変更。

(注4)・・・原作ではトイレではなく、班の全員がそろった寝床での事件。二人が死んだ後、呆然とした
全員はジョーカーの掛け声のもと、死体をそのままに消灯して就寝(笑)。シュールな事態に。

(注5)・・・映画では訓練キャンプのシーンは前半1/2なれど、原作では1/5にすぎないなり。

(注6)・・・高地攻撃で大きな損害を出しつつ勝利する、やはり精鋭の第101空挺師団(当時は
パラシュート部隊ではなくヘリコプター騎兵)の戦いを描く。ベトナム戦争版203高地?
死体もひき肉(だからハンバーガー)と化す死傷続出の激戦なれど、あんまし反戦じゃねえなり。


(注7)・・・映画の中でのほほえみデブのセリフにあるように、鉛を真鍮メッキで「完全被甲」
(フルメタルジャケット)した、標準的な軍用弾頭のこと。防弾チョッキのことではねえなり。

(注8)・・・映画版のラスト、行軍する兵士たちがミッキーマウスの歌を歌っているなれど、これは原作だと
ネズミを大虐殺する遊び「ラットレース」で切り刻まれ焼かれた死体を埋葬する時に歌うなり。
「何かを殺す」=「殺されるのは自分ではない」安心を求める心の逃避なれど、その心は死んでいくなり。


小説「フルメタル・ジャケット」







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